近年、家族のあり方が多様化し、同性カップルが子どもを迎える選択肢について社会的関心が高まっています。
しかし、日本では同性婚が法的に認められておらず、親子関係の扱いや利用できる制度には制限が設けられています。
一方で、自治体によるパートナーシップ制度の整備が進められ、少しずつ支援の輪が広がっています。
海外ではすでに同性婚を法的に認める国や地域が増え、多様な方法で子どもを迎えられるようになりました。
この記事では、日本と海外における同性婚の現状を整理し、男性同士・女性同士のカップルが子どもを持つための方法や、考えるべきポイントを解説します。
目次
日本と海外における同性婚について
日本では、民法および戸籍法に基づき、同性同士の婚姻(同性婚)は法的に認められていません。
近年、同性婚のニーズが高まっていることを受けて、自治体によっては「パートナーシップ制度」などの制度が整備され、生活上の配慮や証明書が発行されるといった支援が進んでいます。
海外では、同性婚を法的に認める国や地域が増えています。
たとえば、アメリカ・カナダなどの北米、フランス・ドイツ・オランダなどのヨーロッパの一部や、台湾などでは同性婚が法的に成立します。
同性婚の法制度はさまざまな議論を経て世界各国が大きく進展しているものの、日本ではまだ慎重な姿勢をとっており、議論が続けられている段階です。
【男性同士】同性カップルが日本で子どもを持つ方法
男性同士の同性カップルが日本で子どもを持つ方法には、養育里親やステップファミリーなどの方法があります。
養育里親
養育里親は、さまざまな事情で家庭での養育が困難になった子どもを自分の家庭に迎えて育てる里親家庭です。
現在、日本国内で男性同士のカップルが子どもを育てる手段のひとつとして利用されています。
ただし、地方自治体による里親への支援策の差があり、審査基準も厳格に決められているため、同性カップルが必ずこの制度を利用できるものではありません。
地方自治体が主催する研修や面接といったプロセスを経て登録され、里親の資格を得ることができます。
制度の性質上、養育している子と両親に法的な親子関係が発生しない点もよく考慮しなければなりません。
精子提供
精子提供は、第三者の男性から提供された精子を用いて人工授精や体外受精を行い、妊娠・出産を目指す方法です。
精子提供を受ける条件は、男性同士のカップルのうち、パートナーがFtM(出生時の身体的性別が女性で、性自認が男性である人)で、かつ子宮・卵巣を保持している場合に限られます。
ただし、日本では医療機関での精子提供は異性カップルを対象とした運用が中心で、個人間での精子提供はリスクやトラブルが懸念されます。
出産後の親子関係の扱いなど、法律の整備もまだ十分に追いついてはいない状況です。
ステップファミリー
ステップファミリーは、夫婦やカップルの一方または双方が子どもを連れて再婚した際に誕生する家族のことです。
日本では、同性カップルの特別養子縁組が認められていないため、法的に親子関係を結ぶことは難しい状況です。
ステップファミリーとして子どもを養育することは可能ですが、法的な親権者ではないため、学校や医療の場面で同意や手続きができない場合があります。
シリンジ法
シリンジ法は、注射器のような器具(シリンジ)を使用して、精液を膣内に注入し、自然妊娠を目指す方法です。
自然妊娠ができるのは女性に限られるため、男性同士のカップルのうち、パートナーがFtM(出生時の身体的性別が女性で、性自認が男性である人)が条件です。
シリンジ法は、市販の妊活キットを使うことで医療機関を介さず、性交渉も行わずに子どもを持てる可能性があります。
高額な妊活費用がかからない一方、感染症のリスクや手技の不確実性、精子提供者が第三者の場合はトラブルのリスクが介在するといった懸念点もあります。
日本では同性カップルの婚姻や生殖、養育について枠組みが十分に整っていないため、シリンジ法の選択にはカップル間での十分な理解と話し合い、準備が必要です。
法律上は精子の提供者が父親として扱われる可能性もあるため、生まれてくる子どもと父親との親子関係の問題も考慮しなければなりません。
【女性同士】同性カップルが日本で子どもを持つ方法
女性同士の同性カップルが日本で子どもを持つ方法には、精子提供や友情結婚などの方法が挙げられます。
どのような方法が存在するのか、詳しくみていきましょう。
精子提供
女性同士の同性カップルが子どもをもつ場合、第三者の男性から提供された精子を使って人工授精や体外受精などを実施し、妊娠・出産を目指す精子提供が現実的な手段です。
ただし、日本では医療機関での精子提供は異性カップルが主な対象であり、同性カップルが公式に利用できるケースはまだそれほど多くはありません。
精子提供を受けた場合、出産した女性が法律上の母親として認められますが、そのパートナーは親になれないため注意が必要です。
同性カップルのなかには個人間でドナーを探すケースもみられますが、精子の提供者である男性が法的な父親になる可能性や、その他の法的トラブル・親子関係の問題・同意に関する効力の弱さといったリスクを考慮する必要があります。
友情結婚
友情結婚とは、恋愛や性行為といった一般的な結婚関係を伴わない、友情関係による異性間での結婚、および家庭を築く形態のことです。
本来は、恋愛感情や性的関係をもたない男女の結婚を指していますが、女性同士のカップルの一方が信頼できる男性と非恋愛的な結婚をすることで、法的に夫の子として出産する方法も含まれます。
この方法は、出産した女性(母親)のパートナーである女性は法的な親になれませんが、友情結婚をした相手の男性が父親となるため、子どもの戸籍や親子関係を明確にできる点がメリットです。
ただし、友情結婚をした夫婦間での関係性や養育方針、生活と将来に関する設計などは事前に十分に話し合う必要があります。
友情結婚相手の男性と女性カップルの三者がよく話し合い、信頼関係を構築しなければなりません。
【男性同士】同性カップルが海外で子どもを持つ方法
男性同士の同性カップルが海外で子どもを持つ方法には、代理母出産や特別養子縁組などの方法が挙げられます。
代理母出産
代理母出産(サロガシー)とは、第三者である卵子提供者の女性から卵子の提供を受けて体外受精を行い、さらに代理母の子宮内で妊娠し、出産をしてもらう方法です。
男性カップルと遺伝的なつながりを持つ子どもが生まれてくることが大きな特徴で、海外では法的に代理母出産を認めている国や地域があります。
ただし、利用条件は国と地域によって異なり、「代理母出産は合法だが同性カップルは利用できない」といった条件が付帯しているケースもあります。
また、代理母出産に至るための費用が高額であり、契約や法律上の問題、子どもの出生証明や国籍に関する問題など、手続きの煩雑さも特徴です。
代理母出産が認められている主な国は、次のとおりです。
- アメリカ(州によって異なる)
- カナダ
- ウクライナ
- ジョージア
- ロシア
- オーストラリア
- インド
上記は一例で、南米やアフリカ、中東などの地域でも代理母出産が行われているケースがあります。
ただし、法制度は国と地域により異なるほか、宗教上や政治的な理由により禁止されている国や地域もあります。
現在、代理母出産が認められていても、事情により変更が行われることもあります。
代理母出産を検討する場合、専門の弁護士やエージェントを介して最新の情報を確認しましょう。
特別養子縁組
特別養子縁組とは、事情により実の親が育てられない子どもを、養育する親が実の子として迎え入れる制度です。
養育を希望するカップルが家庭裁判所に申立を行い、裁判所が審判を行って成立します。
日本では認められていませんが、アメリカやオーストラリアなどの海外では、特別養子縁組を利用した男性同士のカップルが子どもを迎えることが可能です。
代理母出産よりも費用負担が少ない場合が多い反面、安定した収入や生活環境が整っていること、パートナーシップが継続しているかどうかなど、幅広い項目にわたって審査が行われることも特徴です。
一時的に子どもを養育する里親制度よりも厳格に審査が行われるため、養育体制の準備が不可欠です。
【女性同士】同性カップルが海外で子どもを持つ方法
女性同士の同性カップルが海外で子どもを持つ方法には、特別養子縁組や相互体外受精などの方法が挙げられます。
特別養子縁組
特別養子縁組は、事情により実の親から養育を受けられない子どもが、親との法的な親子関係を完全に終了させて、養育を行う新たな親との親子関係を形成する制度です。
日本ではまだ認められていませんが、イギリスや北欧などの海外では女性同士の同性カップルが子どもを持つ方法として広く知られています。
子どもの法的な養親となる一方、厳格な審査が行われることも特徴です。
安定した生活環境や養育にふさわしい能力、パートナーシップの安定性が重視され、子どもの福祉が優先されます。
相互体外受精
相互体外受精(Reception of Oocytes from Partner:ROPA法)は、一方が卵子を提供し、もう一方がその受精卵を子宮に移植して妊娠・出産を担う方法です。
子どもの出産に関して、二人ともに遺伝的・妊娠的な役割を共有できるという特徴があり、二人の女性のどちらかが「遺伝的母親」もう片方が「生物学的に妊娠出産を行う母親」をこなします。
一方のパートナーが卵子を提供し、もう一方のパートナーがその受精卵を子宮に移植して妊娠・出産を担当します。
これにより、片方が遺伝的母、もう片方が生物学的に妊娠・出産を担う母となり、双方が強い結びつきを感じられる点が特徴です。
費用は国・地域や実施するクリニックによって異なり、体外受精のため金銭的負担は大きく、医療渡航の準備も重要となります。
ヨーロッパや南米の一部地域などで法的に認められていますが、日本では法整備が進んでおらず、方法としての認知度も十分ではない状況です。
同性カップルの子どもが幸せに生きるために両親ができること
同性カップルの子どもが幸せに生きるためには、どのようなポイントを意識すべきなのでしょうか。
年齢に合わせて子どもの出自を伝える
同性カップルが子どもを持つ方法には、里親や養子縁組、代理母出産などさまざまな方法があります。
いずれの場合も、子ども自身が自分の出生について知りたがったとき、出自をどのように伝えるかは重要なテーマといえるでしょう。
注意したいポイントとして、大きくなってから詳細を告げるのではなく、幼い頃から年齢に合わせた言葉や方法で、少しずつ説明を行うと良いでしょう。
突然詳しい内容を伝えるよりも、子ども自身が発した疑問に丁寧に答えていく方が、納得や安心感を与えられます。
子どもはすべてを伝えられても、大人と同じように理解できるわけではありません。
自分のルーツを自然に理解し、自尊心を育むためにも、家族の形は多様であることや、愛情をもって迎えられたことを繰り返し伝えることが重要です。
LGBTQ+のコミュニティに参加する
LGBTQ+のコミュニティは、同性カップルとその子どもにとって、安心感のある集まりです。
男女のカップルとその実子という、多くみられる家庭とは少し異なる形態であっても、自分たちと似た家族構成の人々に出会うと、「特別に変わっているわけではない」「多くの仲間がいる」という感覚が育ちます。
子どもは多様な家族のあり方を肌で実感でき、孤立感の軽減や家族への理解を深める機会にもなります。
コミュニティ内で親同士が情報交換をする、子ども同士が友人をつくるといった横のつながりが広がることもメリットです。
支援団体や専門家との出会いも期待でき、教育や医療に関する相談窓口にもつなげてもらえるため、不安感や悩みの解消にも効果的です。
同性カップルに育てられた子どもが理解するべき内容
同性カップルに育てられた子どもが理解するべき内容は次の2点です。
家族構成
自分の家庭には、異性ではなく同性同士の親がいるという事実を理解する必要があります。
家族は異性同士が当たり前ではなく、同性同士でも存在し得ることを把握すれば、疑問や不安に縛られすぎずに過ごせるでしょう。
偏見や差別
社会には同性同士の結び付きに偏見をもつケースもあり、差別的な言動や行動に直面するリスクがあります。
そのようなとき、信頼できる人や窓口に相談するといった「自分を守る方法」を知っておくことが大切です。
同性婚で子どもをもつ方法は日本と海外で異なる
今回は、同性婚をしたカップルが子どもを持つ方法について、日本と海外の違いを紹介しました。
日本でも同性カップルの家族形態は少しずつ認知されつつありますが、法制度の整備はまだ途上であり、多くの場合は自治体のパートナーシップ制度が中心です。
海外と日本の状況が異なることもありますが、常に最新の法制度や自治体ごとのルールを理解し、正しくパートナー関係を構築することが大切です。
















