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卵子凍結に利用できる助成金と、申請から受給までの流れ

卵子凍結は妊娠の可能性を高める選択肢の一つですが、実施に際しては多くの費用がかかります。

2023年には助成金制度が創設され、これを機に「卵子凍結を受けよう」と検討される方もいらっしゃるのではないでしょうか。

今回は、そんな卵子凍結に利用できる助成金について、東京都で設けられている制度を例に詳しくお伝えします。

「子どもを授かりたい」という夢を叶えるための、判断材料の一つになれば幸いです。

卵子凍結の基本情報

本題に入る前に、卵子凍結がどのようなものなのかをおさらいしておきましょう。

卵子凍結とは、未受精の卵子を採取して凍結保存することです。

将来の妊娠に備えて、卵子が本来持っている妊娠する能力、つまり排卵や受精、着床を経て妊娠を継続する力を温存するために行われます。

卵子の妊娠する能力は40歳以降に急激に低下するため、年齢を重ねていくうちに妊娠が難しくなることも珍しくありません。

こうしたリスクを軽減するためにも、30歳半ば頃を目安に、卵子凍結を実施するとよいでしょう。

また、卵子凍結には“社会的適応”と“医学的適応”の2種類があります。

健康な方が、卵子の妊娠する能力が高いうちに凍結しておく場合は、社会的適応に該当します。

一方、医学的適応に該当するのは、がんをはじめとする病気の治療によって卵巣機能が低下し、将来の妊娠の可能性が失われると予測される場合です。

該当するケースは異なりますが、いずれも“将来の妊娠に備える”という点は共通しています。

ただし卵子凍結は、あくまでも妊娠の可能性を広げる選択肢の一つであり、将来の妊娠を保証するものではない点は理解しておきたいところです。

卵子凍結にはいくらかかる?

卵子凍結の費用は、総額で40万~60万円程度が目安とされています。

卵子凍結を開始する前に検査を実施した場合や、排卵を促すために薬剤を使用した場合、そして採卵時など、ステップごとに費用がかかります。

具体的には排卵誘発剤の使用には1万円程度、そして採卵には20万円以上かかるのが一般的です。

さらに、凍結する卵子は1個あたり1万円ほどかかるとされており、採卵数や凍結する卵子の数が多いと費用がかさみます。

こうしたステップごとにかかる費用は医療機関によって異なるため、比較検討したうえで卵子凍結を実施する施設を選ぶのが大切です。

卵子凍結に保険は適用できるのか?

結論からお伝えすると、卵子凍結は自由診療に該当するため健康保険は適用できません

治療を目的に行われるものではなく、あくまでも“妊娠の可能性を広げる”という個人の選択によって実施されるものだからです。

しかし、近年では助成金制度が創設され、卵子凍結を支援する動きが社会的に広まりつつあります。

これにより費用面で懸念されていた方でも、卵子凍結を前向きに検討できる環境が整ってきているといえます。

卵子凍結で利用できる助成金

ここからは、2023年10月に東京都が開始した助成金制度を例に挙げて、その特徴を見ていきます。

なお、ご紹介するのは社会的適応による卵子凍結が対象となる制度です。

医学的適応のうち小児・AYA世代のがん患者の方には、全国の自治体で別途助成金制度が設けられています。

卵子凍結に係る費用への助成

“卵子凍結に係る費用への助成”は、名前の通り卵子凍結を受けた際の費用の一部を助成する制度です。

採卵準備のための投薬と採卵、卵子凍結に関する医療行為を行ったケースが対象となります。

ただし、医療機関の初診料や検査費用は対象外となるので、注意が必要です。

金額

この制度を利用すると、採卵や卵子凍結の費用負担を大きく減らすことができます。

その内訳は、次の通りです。

【受給できる助成金の内訳】

助成金を受け取れるタイミング 

金額 

卵子凍結を実施した年度 

上限20万円 

凍結した卵子の保管更新時 

1年ごとに一律2万円(2028年度まで) 

卵子凍結を実施する際だけではなく、凍結した卵子を保管する際にも数万円程度の費用がかかります。

長く保管するほど保管費用がかかるため、この点をカバーできるのはうれしいポイントとなるでしょう。

対象者

対象者は“東京都に住む18歳から39歳までの女性”で、以下の要件をすべて満たす必要があります。

  1. 都が開催する卵子凍結に係る費用の助成対象者向け説明会へ参加した後、調査事業への協力申請を行い、協力承認決定を受けること。
  2. 本人が説明会に参加した日から1年以内に、卵子凍結に係る医療行為を開始すること。
  3. 説明会への参加を申し込んだ日から未受精卵子の凍結が完了し、都へ申請する日までの間、継続して東京都の区域内に住民登録をしていること。
  4. 説明会へ参加した日以降に、登録医療機関において医療行為を開始すること。
  5. 採卵を実施した日における対象者の年齢が18歳以上40歳未満であること。
  6. 凍結卵子の売買、譲渡、その他第三者への提供を行わないこと。また、海外への移送は行わないこと。
  7. 凍結卵子を用いて生殖補助を実施する場合は、必ず夫(婚姻の届出をしていないが、事実上の婚姻関係と同様の事情にある者を含む。)の精子を使用すること。
  8. 卵子凍結後も都の実施する調査に対し、継続的に回答すること。(調査は令和10年度まで実施)
  9. 調査協力助成を受けようとする医療行為について、他の法令等の規定により、国又は地方公共団体の負担による医療に係る給付の対象とならないこと。

引用元:東京都福祉局「事業の概要|卵子凍結に係る費用の助成

対象者の要件は詳細に決められているため、少しでも不明点がある場合は、東京都福祉局のホームページを確認するか、もしくは医療機関に問い合わせることをおすすめします。

生殖補助医療に係る費用への助成

卵子凍結に関係する助成金制度としては、“生殖補助医療に係る費用への助成”も用意されています。

これは凍結した卵子を使用して、夫婦で生殖補助医療を受ける場合に利用できる制度です。

対象となる医療行為は、大きく6つあります。

【助成の対象となる医療行為】

  • 卵子融解
  • 受精
  • 胚培養
  • 胚凍結
  • 胚移植
  • 妊娠確認

このほか、受給できる金額の上限や助成回数などが細かく決められているため、以下で確認していきましょう。

金額

この制度で受給できる助成金額は、以下のように決められています。

【生殖補助医療を実施した場合に受給できる助成金額】

助成金を受け取れるケース 

金額 

凍結卵子を融解して受精を行った場合 

上限25万円(1回) 

凍結胚を融解して胚移植を行った場合 

上限10万円(1回) 

助成を受けられる回数は、生殖補助医療を実施した時点での妻の年齢で決定します。

妻が40歳未満であれば6回まで、40歳以上であれば3回まで助成金を受け取れるといった具合です。

ただし、年齢は治療開始日、つまり凍結卵子の融解を行った日で判断され、実際に受精や胚移植を実施した日ではないため要注意です。

こうした助成回数は出産後にリセットされ、1人目の妊娠・出産を終えて2人目を望む場合は、再度年齢に応じた回数分の助成を受けられます。

対象者

対象者となるのは、妻の年齢が43歳未満の夫婦で、凍結卵子を使用した生殖補助医療を受ける方です。

そして卵子凍結に係る費用への助成と同様に、生殖補助医療に係る費用への助成でも満たすべき要件があります。

  1. 「1回の生殖補助医療」の開始日から申請日までの間において、夫婦(事実婚を含む。)であること。
  2. 「1回の生殖補助医療」の開始日における妻の年齢が43歳未満の夫婦(事実婚を含む。)であること。
  3. 「1回の生殖補助医療」の開始日から申請日までの間、以下のいずれかに該当すること。

    ア 法律婚の夫婦にあっては、夫婦いずれかが継続して都内に住民登録をしていること。

    イ 事実婚の夫婦にあっては、夫婦ともに継続して都内の同一住所に住民登録をしていること。

  4. 医療保険が適用されず、かつ不妊治療を目的としない未受精卵子の凍結保存を実施し、知事があらかじめ登録する登録医療機関において、当該未受精卵子を用いて生殖補助医療を実施したこと。

このほかにも細かな要件が定められているため、詳細は以下の引用元をご確認ください。

引用元:東京都福祉局「事業の概要|凍結卵子を使用した生殖補助医療への助成

卵子凍結の際に助成金を受け取る流れ

卵子凍結の実施にあたって、助成金を受け取るにはどのようなステップを踏めばよいのでしょうか。

ここでは“卵子凍結に係る費用への助成”を利用する場合の流れをお伝えします。

ステップ①説明会に参加する

まずは東京都が開催する、対象者向けの説明会に参加する必要があります。

説明会への申し込みは先着順で、各回175名が定員となっています。

定員が決まっているため、希望日に参加できるよう早めに申し込みましょう。

ステップ②調査事業への協力申請を行う

説明会に参加し、助成金の利用を決めた場合は、東京都の調査事業への協力申請を行います。

協力申請とは、東京都に「この助成に協力します」という意思を伝えるもので、指定された申請フォーム、または調査事業協力申請書に必要事項を記入して申請します。

このとき住民票の写しと、誓約書の添付を忘れないようご注意ください。

申請後は東京都により内容が審査され、1か月ほどで承認決定か否かの通知が届きます。

ステップ③卵子凍結を実施する

無事に協力申請が承認されたら、卵子凍結を実施します。

その際には、“登録医療機関”であるかどうかを必ず確認しましょう。

登録医療機関は東京都が定める基準を満たし、助成の対象として登録された施設のことを指します。

この施設の利用は助成の要件の一つであるため、よくご確認ください。

対象となる医療機関は、東京都福祉局のホームページ上で公開されています。

参照元:東京都福祉局「事業の概要|卵子凍結に係る費用の助成

ステップ④助成金を申請する

卵子凍結の実施を終えたら、助成金を申請しましょう。

指定の申請フォームに必要事項を記入し、以下の書類を添付して提出します。

【助成金の申請で必要な書類】

  • 住民票の写し
  • 受診等証明書
  • 領収書
  • 通帳等のコピー

上記のうち2つ目にあたる“受診等証明書”は、卵子凍結を実施した医療機関に記入を依頼することとなります。

証明書の作成には時間がかかることもあるため、申請期限の直前になって焦らないよう、時間に余裕を持って依頼するのが大切です。

また、助成金を申請するタイミングでアンケートにも回答してください。

アンケートへの回答は“卵子を凍結できた方”と“卵子を凍結できず、やむを得ず治療を中止した方”のいずれも行う必要があります。

それぞれ回答フォームが異なりますので、ご自身が該当するほうを選んで回答します。

すでに卵子を凍結済みでも助成金は受け取れる?

助成金は、すでに卵子凍結を実施した方でも受給できます。

この場合は、凍結した卵子の保管更新時に行われる調査への回答とあわせて申請します。

なお、対象となるのは卵子凍結に係る費用への助成を受けた方です。

調査の回答期間

調査の回答期間は、卵子を凍結した日の1年後から3か月以内となります。

たとえば2025年5月3日に凍結した場合、2026年5月3日から8月2日のあいだに回答を完了させるイメージです。

この調査は毎年実施されるため、凍結日から1年が過ぎていても、次年度以降の保管更新時に手続きを行えば、その年の助成を受けられます。

ただし、助成を受けられるのは2028年度までと決められており、長期にわたって助成金を受給できるわけではない点には注意が必要です。

受給できる金額

保管更新時に行われる調査に回答した場合、1年ごとに一律2万円を受給できます。

繰り返しになりますが、助成金が受け取れるのは2028年度までとなっています。

卵子凍結で助成金を利用する際は、対象となる要件をよく確認しよう

今回は、卵子凍結に利用できる助成金を、東京都における制度を例にお伝えしました。

卵子凍結の実施に際して、“卵子凍結に係る費用への助成”を利用すれば、採卵準備のための投薬と採卵、卵子凍結の費用を抑えられます。

ただし助成を受けるには、年齢や居住地、医療行為などの細かな要件を満たさなければなりません。

くわえて説明会に参加したり協力申請を行ったりと、いくつかのステップを踏む必要があるため、情報収集や準備を徹底するのが大切です。

 

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