妊娠を望んでいて治療を受けたい…と思われる方が、まず受けることになるのが「ホルモン検査」です。
しかし、検査を受けたものの、検査結果の見方がわからず困る方は少なくありません。また、どのようなことがわかるのか不安に思う方もいるでしょう。
そこで今回の記事では、不妊治療や選択的シングルマザーを希望されている方に向けて、ホルモン検査でわかることについてご紹介していきます。
確認するホルモンの種類とそれぞれの働きもご紹介しますので、ホルモン検査を受けたときの参考としてご覧ください。
目次
ホルモン検査とは
ホルモン検査は、不妊の原因を特定するために行う血液検査です。
女性の体の中ではさまざまなホルモンが内分泌に影響を及ぼしています[1]。たとえば月経の周期や排卵、子宮内膜の変化など、月経や妊娠に関わる要素が挙げられます[1]。
治療を進めるにあたって、原因がわからなければ治療の成果が現れにくくなってしまうこともあります。
そのような状況を避けるために、ホルモンの分泌状態を検査して、女性側の不妊の原因となる問題を特定しようとするのがホルモン検査です。
検査を受ける時期
検査を受けるのに適した時期は次のとおりです。
【検査をおすすめする時期】
- 更年期障害のような症状が現れたとき
- 月経が止まってしまったとき
- 体調がすぐれないとき
女性の健康はホルモンの分泌状態によって左右されます。
そのため更年期障害のような症状が現れたとき、体調がすぐれないと感じたときに検査を受けると、その原因が判明するかもしれません。
また、月経や排卵が止まった場合も、検査を受けることをおすすめします。
実際にホルモンの分泌状態を観察するために、不妊治療中は次のようなタイミングで何度か検査を行うことになります[2]。
【不妊治療中の検査タイミング】
- 月経初期
- 排卵期
- 黄体期
3つのタイミングで、エストロゲン、卵胞刺激ホルモン、黄体化ホルモンなどの分泌量を測定するのが不妊治療の基本です[2]。
いずれも、治療を適切に進めるうえで欠かせない検査です。
ホルモン検査でわかること
ホルモン検査でわかることについて具体的に見ていきましょう。
【ホルモン検査でわかること】
- 性周期の規則性
- 排卵のタイミング
- 卵胞の状態
- 卵巣機能の状態
- 残っている卵子の数量
- 疾患や感染症の有無
- 甲状腺異常
- 多嚢胞卵巣症候群
- 視床下部や脳下垂体の状態
ホルモン検査では、不妊治療を進めるうえでの指針となる性周期の規則性や排卵のタイミング、卵胞の状態、卵巣機能の状態などが明らかになります。
また、疾患や感染症の有無も確認することが可能で、甲状腺異常や多嚢胞卵巣症候群、視床下部や脳下垂体の異常を発見できることも少なくありません。
不妊治療中には繰り返し行われるホルモン検査は、女性の健康を守るためにも重要な検査です。
検査で確認するホルモンは?
それでは、検査で確認するホルモンの種類とその働きを見ていきましょう。
女性の体では何種類ものホルモンが分泌されており、検査によって次のようなホルモンの分泌状態がわかります。
1.エストラジオール(エストロゲン)
まずは女性ホルモンとして代表的な「エストラジオール」です。
次のような働きをします。
【エストラジオールの働き[3]】
- 子宮内膜を増やして妊娠の準備をする
- 女性らしい体をつくりだす
- 自律神経の安定をはかる
- 骨の量を維持する
- コレステロールのバランスを整える
- 肌を美しく保つ
女性らしい体を形成し、子宮内膜を増やして妊娠の準備を整えるために必要とされるのがエストラジオールで、骨量を維持したり、コレステロールのバランスを整えたりと、女性の健康維持にも欠かせない役割を果たすホルモンです。[3]
思春期の頃から更年期にかけて分泌量が増え[4]卵胞期前半に多く作られるとされます[1]。
卵胞が育つに従って分泌量が増えるため不妊治療のホルモン検査においては重要性の高い指針で、排卵誘発剤を用いた不妊治療を行う際には、エストラジオールの分泌量で卵胞の発育具合を確認します。
妊娠や出産に欠かせない重要なホルモンです。
2.プロゲステロン(黄体ホルモン)
エストラジオールとともに女性ホルモンの代名詞であるのが「プロゲステロン」です。
「黄体ホルモン」とも呼ばれており、女性の体の中で次のような役割を果たします。
【プロゲステロンの働き[3]】
- 妊娠のために子宮の働きを整える
- 乳腺を発達させる
- 体温を高める
- 食欲を高める
- 体内に水分を貯蔵する
- 睡眠を促す
- 気分の不安定さを呼び起こす
プロゲステロンは、むくみや食欲の増進、気分の不安定さの原因となるため、女性にとってあまりうれしくない働きをするホルモンかもしれません。
しかし妊娠のためには欠かせない存在でもあります。
子宮内膜を妊娠しやすい状態に整え、子宮の筋肉を緩和する働きをするためです。
プロゲステロンの分泌が不十分であると、黄体機能不全を招き、不妊の原因になることがあります。
3.AMH(抗ミュラー管ホルモン)
ホルモン検査で確認できる項目のひとつが、AMH(抗ミュラー管ホルモン)の値です。
AMHは卵巣の状態を反映し、卵巣に残っている卵子の個数を確認できるとされています[2]。
適切な値は年齢に応じて変化し、加齢とともに低下するため、卵巣年齢の目安として活用されます。
ただし、値が高ければ妊娠率が高いというわけではありません[2]。
不妊治療の方針を決めるうえでの参考とされる数値です。
4.FSH(卵胞刺激ホルモン)
「FSH(卵胞刺激ホルモン)」は卵巣に影響を与える性腺刺激ホルモンであり、卵胞の成長を促す役割を持っています[5]。
FSHによって卵胞が刺激され成長し、その後にLH(黄体形成ホルモン)が分泌されて排卵が起こります。
そのため、検査をすることにより、多嚢胞性卵巣症候群の可能性がわかります。
FSH、LH、そして次に解説するプロラクチンは、卵胞の発達や排卵に大きく関与しており、それらのバランスが崩れると不妊のリスクが高まります[5]。
検査ではFSHの数値によって、脳下垂体や性腺機能の低下による月経異常や不妊がわかることも。
卵巣年齢の確認にも用いられる検査です。
5.プロラクチン
「プロラクチン」は妊娠期から授乳期にかけて分泌が増えるホルモンで、無月経・月経不順・黄体機能不全の検査にも用いられます。
プロラクチンは、分泌が多いほど良いわけではなく、産生が多くなりすぎると、「高プロラクチン血症」となることがあります[6]。
妊娠していないにもかかわらず分泌量が過剰になると、排卵が抑制されて不妊の原因となることがあります[6]。
また乳汁分泌や乳房緊満などの症状が現れることもあります。
そのため不妊の原因を探るホルモン検査においては、プロラクチンの数値も重要な指針です。
6.甲状腺ホルモン
ホルモン検査でわかることのひとつであるのが、「甲状腺ホルモン」の分泌状態です。
分泌量が適切でない場合は、不妊・流産・死産・妊娠高血圧症候群のリスクが高まります[7]。
また胎児の脳神経系の発達にも必要となるホルモンであるため[8]、妊娠に成功したとしても検査が続くかもしれません。
妊娠前から妊娠初期には2.5未満、妊娠中期以降には3.0未満が望ましいとされています[7]。
以上のように甲状腺ホルモンの値は妊娠前から出産まで重要なものとされるため、ホルモン検査でもチェックされるでしょう。
ホルモンバランスの乱れが与える影響
女性の体においてホルモンバランスが乱れると、次のような影響があると考えられています[3]。
【ホルモンバランスの乱れによる影響】
- 月経不順
- 不妊症
- 無排卵
- 更年期障害
- 貧血
- うつ
- 生活習慣病
- 疾病罹患率の上昇
- 子宮や卵巣周辺でのがんリスクの上昇
ホルモンバランスの乱れが与える影響は非常に大きく、月経不順や不妊症だけでなく、その他の疾病の引き金ともなりかねません。
子宮頸がんや子宮体がん、卵巣がん、乳がんもホルモンバランスの乱れから引き起こされることもあります。
妊娠するためにはホルモンバランスを整えることが重要です。
また健康な体を維持するためにも、ホルモン検査を受ける意義があります。
ホルモン検査でわかることは不妊の原因+女性の健康状態
いかがでしたでしょうか?
この記事を通じて、ホルモン検査で明らかになる内容をご理解いただけたかと思います。
ホルモン検査は不妊の原因を明らかにするために欠かせず、女性の健康管理にも役立ちます。
ただし、ホルモン検査に異常が見られない場合でも、パートナー側に不妊の原因があることは珍しくありません。
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[1]参照:JSTAGE:(PDF)女性ホルモン検査とその評価
[2]参照:こども家庭庁:不妊治療って何をするの? 検査やステップを専門医が解説
[3]参照:働く女性の心とからだの応援サイト:女性はライフステージごとに女性ホルモンが大きく影響する?!
[4]参照:JSTAGE:(PDF)ライフサイクルと心身の健康
[5]参照:国立国際医療センター:不妊症について
[6]参照:京都医療センター:下垂体の病気について
[7]参照:国立成育医療研究センター:(PDF)橋本病と妊娠