体外受精をしようかと考えられている30代の方に向けて、成功率・妊娠率について解説します。
不妊治療をしてもなかなか子供を授かれないとき、体外受精を試したいと考える女性は多いようです。しかし30代後半の方では、体外受精の費用の高さや成功率の低さを知って、本当に成功するのかと疑問を持つ方も…。せっかく高額な治療費を支払って治療を受けるなら、絶対に子供を授かりたいと思われるのではないでしょうか。
そこで今回の記事では、30代前半・30代後半の方の体外受精の成功率・妊娠率についてご紹介していきます。実際にどのくらいの妊娠率であるのか、成功率の高い治療法を選びたいと思われている方の参考になるはずです。
目次
30代の体外受精による妊娠成功率
それでは30代女性の妊娠成功率はどのくらいなのでしょうか?30代前半・後半とわけて、体外受精での成功率・妊娠率を見ていきましょう。
30代前半
年代別の体外受精による妊娠成功率のデータは残念ながら見つかりませんでしたが、2017年度で不妊治療の成功率は約32%となっています。
全年代におけるGIFT法などを含むIVF(In Vitro Fertilization)の妊娠率は2017年度で23.11%です。そのため30代前半では不妊治療での妊娠率が平均より高くなるでしょう。IVFとは体外受精のことですが、GIFT法は受精卵ではなく精子と卵子を卵管に移植する治療法です。妊娠率のデータにはGIFT法など、体内での受精も含まれていることに注意してください。
また30代前半の女性が体外受精治療を受ける割合は高くありません。2020年に発表されたデータによると、治療を受けた方の割合は全体の10%にとどまっています。しかし1992年から2017年のデータを見ると、体外受精は顕微授精よりも高い妊娠率を維持している傾向です。
他の治療法で妊娠率が高くなっている可能性もありますが、他の不妊治療と比較して妊娠率が高い傾向にあります。したがって約32%と高い数値を誇っていると考えて問題はないでしょう。
出典:厚生労働省:(PDF)不妊治療の実態に関する調査研究について
出典:法務省:(PDF)日本の生殖補助医療の現状と課題
30代後半
30代後半の方も体外受精成功率に関するデータはありませんでしたが、不妊治療の成功率は2017年度のデータで約23%です。30代前半の方の項目で解説したように、GIFT法などを含むIVF治療による妊娠率として報告されています。ただし30代後半では体外受精を受ける方の割合は増え、16%となります。そのため30代前半の方のデータよりも、より体外受精の成功率に近いデータとなっているはずです。
30代後半の方は体外受精においても、その他の不妊治療においても成功率がやや低くなる傾向です。35歳以上になると妊娠率は低くなるとされます。しかし実は2000年から2011年にかけて、35歳以上で出産された方の割合は12.8%も増加しています。さらに40歳以上で出産された方も、2.3%の増加です。30代後半では約23%と妊娠率が低くなりますが、妊娠できる可能性は以前より高くなっているのではないでしょうか。
出典:厚生労働省:(PDF)不妊治療の実態に関する調査研究について
出典:法務省:(PDF)日本の生殖補助医療の現状と課題
出典:厚生労働省:(PDF)不妊治療をめぐる現状
30代後半でも体外受精の成功率を高める方法
30代後半の方で体外受精の成功率を高めるには、次のようなことが大切です。
【成功率を高めるためのポイント】
- 1日でも早く不妊治療を始めること
- ご自身にあった治療方法を選ぶこと
- 受精卵の凍結保存をしておくこと
- 妊娠しやすい生活習慣へと見直すこと
年齢は年単位ではなく、日単位で重ねられています。1日でも早くご自身にあった不妊治療を始めれば、妊娠率・成功率も高まるでしょう。また受精卵を凍結保存させておけば、いざというときにより品質の高い受精卵を使えます。
不妊治療に加えて、妊娠しやすいように生活習慣を改善していくことも大切です。卵子や精子も日々の生活により作られます。栄養バランスの良い食事を摂り、適度な運動と十分な睡眠を心がけましょう。ストレスを溜め込まないことも大切。
健康的な生活を送りながら適切な不妊治療を受ければ、30代後半の方の不妊治療の成功率も上がっていくはずです。
女性の年齢と卵子の質の関係
女性の年齢と卵子の品質には深い関係性があります。30代後半になると体外受精の成功率や妊娠率は残念ながら下がっていきます。妊娠率が低くなるのは、女性の年齢とともに卵子の品質が低くなるためです。
卵子を作り出す働きを担う卵母細胞は、女性が年齢を重ねるとともに数が減っていきます。さらに30代後半になると不妊治療を行っても流産率が高くなり、妊娠率が低くなる傾向です[1]。また卵子になるまでの分裂が途中で停止してしまい、染色体異常が発生しやすくなるともされます[2]。質の低下について確かな研究結果はありませんが、以上のことから卵子が老化し、妊娠率が低くなると言われているのです。
体外受精の移植方法による成功率の違い
30代後半になると体外受精成功率が低くなる傾向と解説しました。しかし体外受精は移植方法により成功率が変わります。30代後半の方が体外受精の成功率・妊娠率を高めていくには、移植方法を選ぶことも大切でしょう。
初期胚の移植
初期胚の移植は少し妊娠率が低く、リスクが高い方法です。初期胚の移植とは受精から2~3日目の胚を、採卵した周期にそのまま移植する治療。妊娠率は約30%と低めです。さらに治療により卵巣が腫れたり、黄体機能不全や卵巣過剰刺激症候群を発症したりするリスクが高まります。
2段階にわけて移植をした場合、1回での移植よりも妊娠率が向上するとの報告もあります。複数の胚を移植すると多胎妊娠が起こりやすいため、現在では基本的に1個の胚しか移植されません。しかし現在でも、なかなか妊娠に至らない方への治療法として適応されることもあります。
出典:JCRB細胞バンク:余剰凍結受精卵の医療への活用は、非倫理的か
胚盤胞の移植
胚盤胞の移植は他の移植法に比べて、比較的成功率が高いとされています。
胚盤胞には「新鮮胚盤胞移植」と「凍結胚盤胞移植」の2種類がありますが、凍結胚盤胞移植がより成功率が高いと言われる方法です。一般的には受精から5~6日目の胚を移植しますが、4日目に胚が作られることもあります。そして4日目に作られた胚では凍結させなくても、5日目の凍結胚と同じくらいの成功率であったとの報告もあり有効な方法です[3]。
30代後半で体外受精の成功率・妊娠率を高めたい方にはおすすめいたします。
SEET法
SEET法は、初期胚の2段階移植を進化させた治療方法です。初期胚移植法よりも妊娠率を高めるために、最初に胚移植ではなく胚培養液を注入。胚培養液を注入することで、胚を受け入れやすい状態へと子宮を整えます。
そしてその後、胚を移植することにより30代後半の方でも体外受精の成功率・妊娠率を高められるようにする治療法です。SEET法は有効として、メインの治療法としているクリニックもあります。
凍結胚の移植
凍結胚の移植とは、体外受精により作られた胚を凍結した後に移植する治療法です。採卵した時期に排卵誘発剤の影響で、移植が難しいと判断されたときに適応されます。胚を冷凍保存すれば、新鮮な状態のまま1か月程度の保存が可能です。
そして子宮が移植に適した状態になったときに移植を行います。そのため採卵した周期で移植するよりも、より高い妊娠率を目指せるでしょう。
体外受精とタイミング法やシリンジ法の成功率の違い
体外受精とタイミング法・シリンジ法の成功率を比べると、体外受精の方が高いと考えられるでしょう。
タイミング法は不妊治療の基礎的な治療法です。そしてシリング法は医療の範囲外であるため成功率はわかりませんが、仕組みとしてはタイミング法と同じと言えます。
不妊治療の中でも体外受精や顕微授精、胚移植は最も妊娠率・成功率の高い治療法だとされており[4]、30代後半の方の不妊治療としても適しているはずです。
シリンジ法の詳細については「シリンジ法での妊娠成功率を上げるための方法とメリット・デメリット」、体外受精については「体外受精失敗の理由は?妊娠しない・着床しないときに確認したいこと」の記事でより詳しく解説していますので、合わせてお読みいただければと思います。
体外受精の安全性とリスクについて
「子供を授かれず体外受精を…」と考えても、リスクや安全性の問題が不安という方も多いのではないでしょうか。
体外受精は成功率の高い治療法ですが、リスクはあると言われています。しかし他の不妊治療でも起こり得るリスクがほとんどで、体外受精そのもののリスクは女性の身体的な負担です。
「体外受精の安全性とは?治療の安全性と起こり得るリスク」の記事では、体外受精の安全性とリスクについて詳しく紹介しております。
体外受精・不妊治療を検討しているが、リスク面が心配とお悩みの方はぜひご覧ください。
体外受精は成功率が高い治療法!
いかがでしたでしょうか?この記事を読んでいただくことで、30代前半/後半での体外受精成功率がご理解いただけたと思います。体外受精の妊娠率は他の治療法と比べて高く、30代後半の方でもおすすめです。ただし費用がかかりますので、費用にご不安をお持ちの方はぜひ「I LOVE BABY」までご連絡ください。皆様が費用を気にせず、快適に治療を受けて頂けるようサポートいたします。
精子提供の無料相談&支援サイトの一般社団法人I LOVE BABY
[1]参照:JSTAGE:(PDF)「卵子の老化」説から考える年をとることへの恐れと生殖医療技術の拡大の関係
[2]参照:日本生殖医学会:Q24.加齢に伴う卵子の質の低下はどのような影響があるのですか?
[3]参照:日本IVF学会:Day4で胚盤胞に至った胚における新鮮胚移植の有用性
[4]参照:厚生労働省:(PDF)生殖医療ガイドラインの考え方