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卵子凍結の年齢と注意したいポイントを解説

医原性不妊やその他の疾患など、健康上の理由や加齢によって自然妊娠が難しくなってしまった場合に備えるために、「卵子凍結」が注目されています。

まだ健康なときに卵子を採取して保存することで、妊娠が必要になったときに使用するという方法ですが、なぜ卵子凍結が行われているのでしょうか。

この記事では、卵子凍結を行う背景や凍結事情、年齢制限といった詳細な点について紹介します。卵子凍結の目的や具体的な流れも紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

卵子凍結とは

卵子凍結(未受精卵凍結)は、すぐに妊娠をする必要はないけれど将来的に訪れる妊娠の機会に備えて、健康な状態の卵子を保存するために行われる方法です。

現在、仕事や学業などさまざまな理由で結婚や妊娠を行う機会がない女性が増えており、妊娠適齢期と呼ばれる時期を過ぎてから自然妊娠を行おうとしても難しくなってしまうため、卵子凍結という手段が注目されています。

卵子凍結は若く健康な状態で凍結を行うのが基本のため未婚の女性が多く利用する傾向にありますが、パートナーをもつ女性でも利用可能です。

卵子凍結までの流れとしては、まず内服薬や注射を使って排卵を誘発する薬剤を摂取し、卵巣に働きかけて卵子を複数育てます。できあがった卵子はクリニックなどに来院して「採卵手術」を実施して、採卵針を使って取り出します。

採取された卵子は「ガラス化法」と呼ばれる方法で凍結用の容器に保存し、液体窒素の中で凍結保存します。こうして保存された卵子は、必要になったタイミングで液体窒素の中から取り出し、妊娠のために使用することができます。

卵子凍結を行う背景

卵子凍結を行う背景には、女性のライフスタイルの変化が挙げられます。適齢期に結婚・出産するという従来の流れが見直され、女性自身が多様な働き方や生き方を選択できるようになったために、妊娠出産は急務ではなくなりました。

しかし、適齢期を逃してしまうと健康な卵子が失われる問題もあり、加齢とともに健康を害するケースも問題視されているため、肉体の老化やライフスタイルに左右されない卵子凍結が広く実施されています。

日本における卵子の凍結事情

日本受精着床学会では、会員である企業に対して卵子凍結に関するアンケートを実施しました。医学的卵子凍結と社会的卵子凍結の実施状況として、対象69施設中、42%の29施設から回答を得ることができました。

その結果、都内にある29施設の中で25施設が採卵を実施し、そのうち17施設が卵子凍結を実施していました。17施設全体での合計採卵数は34257、医学的卵子凍結は136件となり、社会的卵子凍結は1135件となっています。

卵子凍結に関わる政策や取り組みとしては、2022年4月から人工授精などの「一般不妊治療」と、体外受精・顕微授精等の「生殖補助医療」不妊治療に保険が適用されることとなり、年齢や回数の要件を満たしている場合について治療費の3割のみ負担となっています(※2)。

都道府県単位でも取り組みを行っており、東京都では2023年度に社会的適応による卵子凍結費用を1人あたり30万円程度助成できるように予算を計上しました(※3)。

※1参照元:一般社団法人日本受精着床学会「日本受精着床学会会員の皆様へ(卵子凍結に関するアンケート調査に関しまして)」
※2参照元:厚生労働省「不妊治療に関する取組」
※3参照元:東京都福祉保健局「これまでの報道発表」

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卵子凍結の年齢制限

卵子凍結は、健康な卵子に対して適用される方法です。更年期を経て閉経をしてしまうと卵子の採取はできなくなってしまうため、それよりも前に年齢制限を設けています。

年齢の上限は原則として40歳前後が目安となっていますが、厳密には「採卵」と「保管」で異なります。

下限についてははっきりと決まっているわけではありませんが、20歳以下の方や未成年者は生理周期が不安定、または体の発達が十分ではない可能性が高いために、卵子凍結を断られる可能性があります。健康的に成長した成人で、体の発育も十分な20歳程度からが理想的です。

採卵

採卵については、原則として39歳以下(40歳未満)となっています。40歳を超えると卵子の質の低下によって出産率が低くなることから、原則的に年齢制限を設けています。

また、採卵の個数は一度に10個の卵子を採取することが望ましいとしています。複数個を確保することで、確実に使える卵子を残すためにも10個が目安となっているのです。

20代では1回の採卵で10個近い採卵が可能とされていますが、年齢を経るにしたがって採卵可能な個数が減っていくために、負担を減らすという意味でも早期の採卵が理想的とされています。

保管

凍結された卵子は、永久に保存できるわけではありません。未受精卵子として保存し続けても、使用する側の女性の肉体が閉経に近づいてしまうと妊娠の確率は大きく下がってしまいます

そのため、採卵した女性が45〜50歳程度までの使用を目安としています。

凍結卵子による妊娠の推奨年齢・確率

凍結した卵子を融解した後にその卵子が生存・受精して良好な受精卵が確保できた場合、次に問題となるものが受精卵1個あたりの妊娠確率です。

凍結時点での卵子の質が高いほど妊娠の確率も高まっていくため、最低でも35歳を過ぎない年齢での凍結が理想的です。

早期の凍結で健康な卵子が確保できる一方、妊娠適齢期以外に卵子凍結を行うと、品質の低下した卵子を保存し続けることになり妊娠確率も下がってしまう可能性があるため、適齢期の範囲内で卵子凍結を行うことが大切です。

卵子が解凍後も生存し、同じく健康な精子と受精できることが前提とはなりますが、妊娠確率を少しでも高めるためには凍結時の年齢が若いほど確率を上げられる可能性があります。

卵子凍結にはなぜ推奨年齢があるのか

卵子凍結に20歳〜40歳という推奨年齢が設けられている理由は、加齢に応じて卵子の質が下がってしまうためです。

データにも現れているように、40歳以上の凍結卵子では妊娠の確率が20%以下にまで下がってしまいます。20代をピークに、少しずつ妊娠率が低くなっていくことを考えても、推奨年齢の設定は必然的といえます。

凍結卵子による妊娠になぜ推奨年齢があるのか

凍結卵子を使った妊娠にも推奨年齢が設けられているのは、加齢とともに母体の妊娠合併症のリスクが上がっていくことが関わっています。

卵子は凍結によって一定の質が保たれますが、母体は年齢に応じて老化していくため、妊娠ができても合併症のリスクが避けられません。

例としては早産のほか、妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病、前置胎盤といったトラブルが挙げられます。

卵子凍結を行う場合の注意点

卵子凍結を行う際には、推奨年齢を満たしているかをまずチェックしましょう。推奨年齢以前、あるいは以後の場合は凍結ができない可能性があります。

次に、生理不順やその他の健康不安があるかどうかを確認しましょう。10個程度の卵子の採取が望ましいとされています。

卵子凍結のためにかかる費用

卵子凍結は、「医学的適応」または「社会的適応」を満たしている場合に実施されます。

このうち、悪性腫瘍などに罹患した患者さんが、治療を実施することで卵巣機能の低下を引き起こす場合に、妊孕性を温存する目的で行われる卵子凍結が「医学的適応」になります。医学的適応の際の卵子凍結は保険適用となり、3割負担で卵子凍結が行えます。

悪性腫瘍にかかっておらず健康であっても、仕事やその他の理由ですぐに妊娠ができない(あとからタイミングをみて妊娠したい)というケースは「社会的適応」となり、こちらは保険適応対象外となっています。

保険適用外の場合、卵子凍結は全額自己負担となります。採卵だけで15万円以上、凍結には5万円前後(卵子1個あたり)がかかります。凍結卵子の保存にも費用がかかり、年間で2~3万円程度が目安です。

将来の可能性に向けて準備を行うことが大切

今回は、卵子凍結の流れや目的、対象者の年齢制限や費用の目安について紹介しました。

女性のライフスタイルが多様化したことに伴い、卵子凍結は今後もさらに需要が高まっていくものと考えられます。一方で、採卵から保存までが高額であるため、早期に卵子凍結を行う場合は十分な予算を確保したうえで、計画的に採卵を実施する必要があります。

自分自身の卵子が必要になるときまで可能性を残しておけば、10年後・15年後と歳を重ねても安心感があります。早い段階から後悔のないように準備をしておきたいですね。

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