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2024.02.25

精子提供を経て出産に至った保護者が抱える子育てのお悩みとは

さまざまなお悩みを抱えながらも、精子提供サービスを通して愛しいわが子に出会えたとき、新たにぶつかるのは育児という壁です。
子どもの成長においては、保護者の準備は欠かせないものです。

今回は、『こうのとりあしながプロジェクト』の運営責任者が、精子提供サービスで出産されるにあたって、知っておくべき子育てのお悩みを、みなさまにお伝えいたします。

目次

依頼者様が抱いている「不信感」は、サービスの“ありのまま”を伝えて「信頼感」に

2024年2月時点では、どのくらいの人数の依頼者様を支援されているのでしょうか?

当サービスの設立当初(2023年1月)からの支援実績ですと、総数150名程度、うち出産に至ったのは30名以上です。
現在進行形であれば、50名ほど支援させていただいており、うち10名以上の方が妊娠中です。(※)

不妊治療を経て出産まで至ることのできる可能性は、依頼者お一人おひとりの体の調子や、周囲の環境など、さまざまな要因によって異なるので、一概に同じ条件があるわけではありません。
なかには、治療途中で閉経して不妊治療自体を続けられなくなる方や、気持ちが折れて辞めてしまう方もいらっしゃいます。

精子提供サービスの利用にあたっては、妊娠や出産を目標としていても、「全員が達成できるわけではない」ということをあらかじめ念頭に置いていただければと思います。

サービス設立からわずか1年間での、この実績についてはどのようにお考えですか?

正直なところ、この支援実績にはまったく満足しておりませんし、目指すべき貢献活動には程遠いと思っています。

というのも、日本産婦人科学会が2023年に発表したデータによると、2021年度における体外受精の出生数は64,679人でした。
そのまま置き換えて考えると、約7万人もの方が、当サービスの支援を必要としているわけです。
すべての方が当サービスの対象者になるわけではありませんので、仮に1割の方が対象者とすると約7,000人。
そこから、現実的に支援できるのが約1割とすると、800人弱ということになります。

支援を必要としている方の数は、これまでの支援実績と比べてはるかに上回っているのです。
私たちのサービスがもっと多くの方に届くように、まだまだ精進しなければなりません。

※2024年2月時点

参照元:日本産婦人科学会「2021年 体外受精・胚移植等の臨床実施成績」

依頼者様は精子提供サービスというものに対して、最初は不信感を抱いていましたか?

正直なところ、不信感を抱かれている方がほとんどです。
お問い合わせいただいたあとは、必ず対面での面談を行っているのですが、面談時はもちろん、実際に支援を進めているあいだも不信感を拭いきれない方はいらっしゃいます。

どのサービスを利用するにしても、一定の不信感は抱くものだと思います。
ただ、「支援を必要としている」という事実に対して、その願いを叶えられるのはどこの業者を使っても変わりません。
ですから、私たちは伝えるべき情報を必ず伝えています。
ホームページにも書いていない、サービスのありのままの姿をお見せしたうえで、それをどう判断されるのかは依頼者様次第ですね。

不信感を抱く依頼者様と、どのように関係値を築いたのでしょうか?

「嘘を言わない」。これに尽きます。
依頼者様と接するうえで、私が一番大切にしていることですね。
もちろん、できることは「できますよ」と伝えますが、できないことも「できません」と、はっきり伝えています。

当サービスのネガティブな面も含めて、ありのままをお伝えすることで、最初の面談で「利用したいです」と、ご決断いただけるケースもあるんです。
ただ、たとえ即決された場合でも、その場で回答をもらわず、必ずほかの業者の話も聞いていただくように伝えています。
それは、「ご自身が本当に納得した業者を選んでほしい」という私たちの切実な想いからです。

精子提供サービスを利用される依頼者様は、お子さまを授かって新しい人生をスタートできることを、一番望んでいるかもしれません。
しかし、お子さまを授かることが、人生のすべてではないのも事実です。
「子どもを授かりたい!」という気持ちが前のめりになりすぎて視野が狭くなり、クリアにすべき懸念点に気づかないまま、業者に依頼するのは一番避けていただきたいのです。

そのうえでも、「こうのとりあしながプロジェクトを利用したい」と、ご連絡をいただける依頼者様には感謝しかありません。

出産されたご依頼者様と、思い出に残るエピソードはありますか?

依頼者様からの喜びを感じられる瞬間は、ちょっとした出来事であったとしても、すべてかけがえのない思い出です。

具体的に挙げるとすると、もともと、当サービスに対してご不安を抱いていた方が、無事に妊娠・出産できたときですね。
当初の不信感が信頼感に変わり、「これで会うのが最後になるのは、さみしいですね」と、出産後におっしゃっていただける瞬間は、言葉に表せない気持ちになります。
依頼者様は、依頼当時のお気持ちを覚えていないかもしれませんが、その瞬間に私たちのサービスを認めていただけた気がして、この活動をしてきてよかったなと思いますね。

前提として、依頼者様とのつながりとしては長い縁よりも、短い縁になるほうが喜ばしいことです。
短期間で妊娠・出産に結びつけたわけですから。
現在支援している方はもちろんですが、これから支援させていただく方とも、その短い縁を大切にしていきたいなと思います。

子育ては保護者の責任。事前準備はもちろん、場合によっては周囲を頼る

育児にあたっては、妊娠前とは異なる悩みが出てくるものかと思いますが、出産後のお悩みとして多いものはありますか?

当サービスを利用されるほとんどの方が、初めて子育てに携わられるので、出産後のお悩みとしては、一般的な育児に関するものが多いですね。

ですから、当サービスをご利用いただく依頼者様には、面談の際に「相談できる相手が近くにいるかどうか」を必ず確認しています。
特に選択的シングルマザーの方は、頼れるご家族や知人がいなければ、一人でお子さまを育てていくのは正直難しいと思います。
もし、ご家族の賛同が得られていない場合や、相談できる相手が近くにいない場合には、支援を実施していません。

私も現在子育てに関わっているからこそわかるのですが、子どもが産まれてから2~3か月は、まとまった睡眠時間は確保できません。
赤ちゃんは、頻繁に熱を出したりミルクを吐き出したりするものです。
いくら妊娠中に情報収集をしていても、実際に体験するのとではわけが違います。
初めての子育てでは、その一つひとつに焦るので、子育ての先輩であるご両親や頼れる人がそばにいるだけで、精神面での安心感につながります。

そういった育児のお悩みは、どのように解決していけばよいでしょうか?

場合によっては「今すぐに相談したいのに、近くに相談者がいない!」というケースもあるでしょう。
そのようなときは、コミュニティに頼ってみてください。

おすすめは、LINEのオープンチャットです。
妊活や体外受精、男性不妊など、さまざまなスレッドが立てられており、個人情報を気にすることなく気軽に悩みを相談して、有益なアドバイスをもらうことができます。
自分のお悩みを投稿すれば、第三者からの意見を得られるので、一人で悩みつづける必要もありません。

「○○県で不妊治療中の方」「不妊治療経験者の情報共有部屋」など、細かくグループが分かれているので、ご自身の状況にぴったりのスレッドが必ず見つかるはずです。
SNSが主流になりつつある、今の時代ならではの便利な仕組みは、ぜひ活用しましょう。

子育てと仕事の両立には、みなさまどのように向き合っているのでしょうか?

子育てと仕事を両立させるなら、まず認可保育園を利用したいですね。
シングルマザーの方であれば、認可保育園の審査に落ちることはほぼありません。

また、子育てとの両立を受け入れてもらえる職場かどうかも大事なポイントですよね。
客観的に判断するためには、お子さまを育てながら働いている従業員が在籍しているかどうかを確認してみてください。
もし、該当する社員が在籍しているのであれば、何かしらの対応が望めるでしょうし、逆に在籍していないのであれば、あまり理解のある企業ではないかもしれません。

仕事と子育ての両立に理解が得られない職場なのであれば、思い切って転職することを考えましょう。
私たちのサービスの依頼者様にも、子育てとの両立を理解してもらえる企業や、かかりつけのクリニックに通いやすい企業に転職された方は複数いらっしゃいます。
私の妻も、子どもを育てながら働いている従業員が職場に在籍していなかったので、結果として退職しました。

そもそも、職場においては、不妊治療を受け入れてもらえるか、認めて応援してもらえるかを見極めることも大事です。
というのも、不妊治療を受けるには、定期的にクリニックに通う必要があり、一般的な企業で利用できる年間有給日数10~20日では足りないケースがほとんどであるからです。

それほど多くないとは思いますが、今の環境がつらいなかで、勤め先を変えることもままならないというケースの場合でも、何かしらのセーフティネットがあります。
手間がかかる作業ではありますが、環境を変える方法を根気強く模索しましょう。

出産後によくあるお悩みに対して、妊娠中から準備できることはありますか?

子どもが産まれる前に、かかりつけのクリニックを決めておくことです。
実は産まれたての赤ちゃんは、母親の免疫力を持っているので、ウイルスや病原体に抵抗する力が一番強いんです。
そう簡単に、赤ちゃんの身に何かあることはないはずですが、すぐにアドバイスをもらえるようなクリニックを探しておくと、もしものときでも安心ですよ。

とはいえ、かかりつけのクリニックの受診時間外に、緊急で医者にかかりたいときもあるでしょう。
そんなときのおすすめなのが、「みてねコールドクター」というサービスです。
24時間体制で医者が電話で対応してくれて、必要に応じてオンライン診療を受けることができます。

意外とこういうサービスがあることを、知らない方は多いのではないでしょうか。
まずは、子育てにおいて知るべき情報を徹底的に調べておくことが大切です。

参照元:みてねコールドクター

『こうのとりあしながプロジェクト』では、ご依頼者様の出産後のサポートは実施していますか?

当サービスのサポートは、育児に必要な情報提供や、場合によっては費用面のご相談など、あくまで妊娠中に留まります。
ですから、出産後に行っているサポートはありませんが、そのぶん子育てにおける給付金の情報や、安定期に準備しておくべきものなど、伝えられる情報は最大限にお伝えしています。

少し話は逸れますが、依頼者様とは、DNA鑑定にあたってお子さまの検体をいただくために、出産後に一度だけ直接お会いする機会があります。
それ以降、依頼者様から「子どもが1歳になりました」という連絡をもらうことはありますが、支援全体を通して私たちから依頼者様に連絡をとることはありません。
それは、サービス運営者が、依頼者様の日常生活に入り込むことが、良い影響を与えると思っていないからです。

お子さまがお産まれになったあとは、依頼者様自身が切り開いていくものですから、ときにはご家族や知人の力を借りて、人生を豊かなものにしてほしいですね。

自分が選んだ道が正しい選択肢になる

精子提供・不妊治療を現在お考えの方に向けて、メッセージをお願いします

不妊治療を検討するうえでは、調べるほどに情報は出てきます。
その際に注意していただきたいのが、必ず期限を設けて行動することです。

人間は新たな決断を迫られると、失敗することを恐れて正解の選択肢を探そうと悩むものです。
ご自身が選んだ選択肢が正解になっていくのですから、目の前にある選択肢のなかに正解はありません。
心ゆくまで調べることも大切ですが、見切りをつけるためにも期限を決めておきましょう。

最後になりますが、ご両親は一番身近な子育ての先輩です。
たとえ仲が悪かったとしても、不妊治療を受けるうえでは必ずご両親にも相談してください。

さまざまな考えを経て、『こうのとりあしながプロジェクト』とのご縁を選んでいただけた場合には、その選択が正解となるよう、最大限の支援を実施させていただきます。

精子提供の無料相談&支援サイトの一般社団法人I LOVE BABY